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女将のひとりごと

今月のひとりごと -女将が日々を綴る-

女将 写真

暑さ逃れ
揺れるかんざし
物語る
(岡崎 細見美術館 にて)

七月の京は祇園祭一色どす。もう耳には毎日♪コンコンチキチンコンチキチン♪が勝手に鳴ったはります。
一か月の長いお祭りは7月17日の先祭の巡行・7月24日の後祭の巡行が有名どすけど、ほんまは「一年かけて臨んだはるお祭りどす」と、言っても過言ではないほどの大きくて深いお祭りどす。1100年以上の歴史を持つこのお祭りは皆様もご存知やと思いますけど<疫病退散・国家安寧>の祈りの祭り、八坂神社の祭礼どす。
勿論、祇園祭大好きなうちは(私は)暑い暑いのに巡行は見に行きますえ~。
そやけど毎年祇園祭の俳句も芸が無いさかい、来月4日には終わってしまう<澤乃井櫛かんざし美術館所蔵
ときめきの髪飾り―おしゃれアイテムの技と美―>に行ってきましたさかい、ご案内しますね。

祇園に生まれはって芸妓さんにならはった岡崎智予さん(1924-1999)が後に東京で料亭の女将さんにならはりました。芸妓さん時代からずっと40余年かけて3,000点以上もの櫛やかんざしを主に集めはったんどすけど見事なコレクションやさかい(1998)年、銘酒「澤乃井」で知られる酒造元 小澤酒造株式会社の名誉会長 小澤恒夫氏が、東京・青梅に「澤乃井 櫛かんざし美術館」を開館しゃはりました。
芝木好子さんの小説「光琳の櫛」のモデルにもならはった岡崎智予さんのコレクションはほんまに凄い!!
かんざしが大好きなうちは、展示したはるとこからなかなか離れられず「あゝこれも欲しい、あれも欲しい」で、うっとりどす。

尾形光琳さん、酒井抱一さんの高名な美術家による逸品もあるし、木、象牙、べっ甲、金銀、ガラス、水晶、珊瑚など様々な材料で作られてて何と言っても手の込んだ蒔絵の櫛が圧巻どす。装飾のモチーフとなっているものも、四季の植物、風景、人物、動物、日本地図などこんな小さな櫛の持ち手の部分に施してあって、そこにはストーリー性も感じられます。しかも印籠(携帯用薬入れ)とペアの絵柄のものもあり、ほんまに当時の職人さんの高度な細工に驚きますえ。
もう今は見られへん飴鼈甲(べっこう)と珊瑚のびらびら簪もようけ(たくさん)展示してあって技術の高さも素晴らしおす。勿論、櫛と簪の同柄もあるし、櫛・簪・笄(こうがい)のお揃えもありました。
とにかくうちのお気に入りは宝尽くし文様の櫛と笄のセット、お正月用の羽子板飾り金珊瑚簪、蔓草文様蒔絵図団扇型象牙簪・・・もう現代では価格が付けられない程の逸品どす。海外のお客様も見に来たはりましたけど江戸時代からの日本の技術・・・どうどす?と、自慢したくなりました。
その他にも筥迫(はこせこと読みます・化粧ポーチ)、紅板(べにいたと読みます・リップパレット)、着物、さらには矢立(やたてと読みます・携帯用筆記用具)や印籠(携帯用薬入れ)など日本工芸の技や粋が凝縮された作品に囲まれた幸せな時間どした。

歴史的に見ても櫛は縄文時代からあったらしく、髪をといて束ねると言う二つの働きやったそうどす。そやけど奈良時代には隋や唐の影響を受けて大きな髷を結い二本足の簪が流行、平安時代は黒髪そのものに美を求め結髪時代は去って垂れ髪の時代やったそうどす。長い垂れ髪時代が去って江戸時代の初期は浮世絵や風俗画に残されているように髪を結いあげたはります。そやけど単純に一枚の櫛を挿したはる程度で質素なイメージどす。
江戸時代の中期以降からは木・鼈甲・象牙・ガラスなどの櫛が流行りましたけど、封建社会どすなぁ。富豪さんでも町人は付ける事なくお武家さんの奥方やないと高価なものは付けられへんかったらしおす。
そやけど元禄・享保時代には益々流行して遊女の間では二枚櫛三枚櫛を挿すようになったそうどす。段々エスカレートどすなぁ。その後、簪も流行り耳かきタイプ・玉簪・平打ち簪そして花簪と豪華なものへと変遷していきます。そやけど、この一番豪華な花かんざしは実は奈良時代にあったそうどす。国宝薬師寺の吉祥天女が挿したはります。今度奈良に行ったら見てきますね。
この花かんざしは享保~寛政のころ全盛期を迎えます。この頃、垂れ簪のびらびらかんざしも付けたはったそうどすえ。華やかどすなぁ。
明治になり日本髪はこじんまりしたタイプになり、鹿鳴館以後には束髪が流行し簪も段々と姿を消します。洋行帰りの下田歌子さんの前髪に毛タボを入れ庇のように張り出すスタイルが流行り、その後川上貞奴が考案したスタイルが昭和迄続きます。すでに大正期にはセルロイド製の櫛やつまみ細工の髪飾りなどありましたが、いよいよ日本髪を結う人も少なくなってパーマの時代になります。実用本位で合理的になって来たと言う事どすなぁ。そうなると櫛・簪・笄は貴重な歴史を物語る工芸品になっていくのどすな。

ほんまに綺麗な素晴らしい美術工芸の細工物をゆっくり見て、歴史を感じました。外は危険な暑さ。
しばし過酷な暑さから逃れ、ひんやりした空気感の中、櫛や簪は長い年月を歩んできゃはったんやなぁと・・・・。

今日は着物で来たさかい、入場券も200円引いてくれはったし、嬉しおす。
この美術館にはこじんまりしたカフェ<キューブ>が併設されてます。ちょっとほっこりしたいさかい入りまひょ。図録も見ながら、わてはいつの時代に戻ろうかなぁと。やっぱり櫛やら簪やらいっぱい挿したはった江戸中期がええわ!びらびら簪も勿論挿しますえ。チョコレートケーキと暑くてもホットコーヒで。
コーヒちょっと薄いかも・・・。ふふふ

弥生 女将

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