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女将のひとりごと

今月のひとりごと -女将が日々を綴る-

女将 写真

寒雨に
ぐるり回りし
さや仏
(六角堂 非公開文化財特別公開にて)

一月往ぬる二月逃げる三月去るは、ほんまにその通りどすなあ。
何や知らんけど、あっと言う間の1月2月3月。年末年始は旅館にとっては大忙し。お正月は最近は家の軒先に角幕しゃはるとこなんか何処にもあらしまへんし、ましてやマンションも増えて門松もあらしまへん。
そういう意味では歳時記を忠実に守ってるのは、旅館やホテルさん、祇園や宮川町などの五つの花街くらいどすやろか。当館の暖簾は月毎に変わるさかい、お客様も季節感がありますねと、ご出発の際に写して帰らはる事がようあります。いつまでも守りたい風習どすなぁ。
ほんで(そして)この三ヶ月は、迎春・節分・お雛様と目まぐるしく設えも変わり、暖こうなったり底冷えきつうなったりと、気温の変化も激しくあっと言う間・・・と言う事どすなあ。言い訳やおまへんけど(言い訳と違いますけど)

今月は京の冬の旅(第59回)「世界遺産 登録30周年」「洛陽三十三か所 観音霊場再興20周年」を掲げて非公開文化財特別公開のひとつをご案内しますえ。うちらは(私たちは)冬旅(ふゆたび)と呼んでますけどほんまになかなか見せてもらえへんお宝を目の当たりに出来ますえ。
当館から徒歩5分くらいの頂法寺さん。六角堂さんの名前で親しまれたはる西国三十三カ所十八番札所・洛陽三十三カ所観音霊場第一番札所どす。
毎朝うちは六角堂さんに寄せてもろてからの出勤どす。ご本堂の屋根が六角やさかい六角堂さんて呼ばれたはります。勿論前の道は「六角通り」どすえ。うちは六角堂さんでいつも季節を感じています。近辺ではいち早く桜が咲かはるし、ハラハラ散り始めはったら次に桜満開は木屋町通りへと、教えてくりゃはります。

ほんでご本堂には綺麗な綺麗な艶やかな如意輪観音さんがやはります。薄暗い本堂の奥から独特の笑みを湛えたはります。大体の方はこの如意輪観音さんがご本尊やと思たはります。うちも長い間そう思てました。実はこの如意輪観音さんは御前立(おまえだち)でその後ろにお厨子があって小さな如意輪観音さんがやはるのどす。そやけどそのご本尊さんは非公開中の非公開!!今回も見せてもらえませんでした。そやけど何よりお堂の中の内陣に上がらせてもらえるし、しかも金網越しに毎朝お会いしている御前立の観音さんに触れんばかりの距離でお会い出来ます。毎日会うてるさかい、まるで親友みたいに思てた御前立の如意輪観音さんは近くで拝見させてもらうと艶々のお顔に笑みと伏し目、立膝、しかもその膝に肘を載せて指先は頬に!物憂げな表情やけど腕は6本も持ったはります。羨ましいわあ。・・・ふうぅん・・そーなんや!観音さんから見たら、毎日毎日仰山のお人さんが、金網越しに身の程わきまえず、頼み事ばかり・・・観音さん曰く「それで、頼み事が叶う様に自助努力をしたん?してへんのと違う?」と、とうとう呆れて目を伏せて、片膝立てて頬杖を・・・「頼むより前に努力をしゃはったら!!」と、衆生を救う体勢をやめはったんやろか・・・。と、うちは想像を逞しくして、前に横たわる五鈷杵(ごこしょ)と言う金物に触れてうちの頼み事は聞いておくれやすと、観音様と結縁(けちえん)を勝手に結びました。ほんまにごめんやす・・・

ほんで次にご本堂の後ろに華道会館が建っててそこの3階に、なかなかお会いできひん非公開中の非公開の
如意輪観音さんが入ったはったと言われる<鞘仏さん>(さやぼとけ)が見られます。勇み足で会場に入ると、丁寧に説明をしてくりゃはる方がやはって、ようわかりました。秘仏の如意輪観音さんは5.5㎝の小さな観音さんらしく、ショーケースに入ったはるちょっと黒めの鞘仏さんの背中には、ドアのような物が付いたはってそこを開けた空洞部分に秘仏が入ったはったんやて。背中のドアは少し開けてくれたはって、そやけど何回見ても何かミステリー。ショーケースをぐるり回って、ついついまた見てしまいます。胎内仏は京では珍しくなく割と聞きますけど<鞘仏>はうちとしては初めてどす。池坊さんの歴史も触れる事が出来て華道発祥の代々の書物も綺麗に保存されていて、ますます奥深い京に出会えますえ。あゝうちとしては時間が欲しおす。
まだまだ非公開いっぱい!!焦る気持ちを押さえて押さえて・・・。ちょっとほっこりしましょ。いつもは六角堂さん行かはるお客様には隣接のスタバをご案内してましたけど、今回はうちの秘密の場所。ラウンジ235へ。池坊会館の1階の奥にひっそりと開けたはります。白鳥さんの優雅な泳ぎも見れて、然も空いててほんまにほっこりできますえ。京のカフェもやっぱり奥深い事どす。ふふふ

弥生 女将

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